【やが君】二つの「そのまま」を徹底解説(前篇)−ヤバイ、以外の言葉で−
僕はあと一月もせず、やがて大学生になる。
どうも、勝ち猫です。
今回は、『やが君』に登場する「そのまま」という言葉に焦点を当てます。
もとはといえば、アニメ版視聴開始当初のこと、この「そのまま」に関する考察が、僕の『やが君』考の出発点となったのでした。
やが君の言葉は、さまざまな含みを感じさせます。
セリフ回し、サブタイトル、キャラの名前、そして『やがて君になる』という、予感に満ちた、美しいタイトル。
随所に仲谷先生の言語感覚が炸裂しています。
※ 目次 の話数は原作版のものです。
※ネタバレ注意※
- 二つの「そのまま」を定義する
- 第1話 燈子「君もちゃんとそのままを伝えればいい」「君はそのままでいい」(♯)
- 第5話 燈子「そのままじゃいられなくなったから」(♯/♭)
- 第10話 侑「そのままの先輩を受け入れてくれる人」(♯)
- 第10話 燈子「君はそのままでいてね」(侑の独白内に紛れて)(♭)
- 第十話 燈子「君はそのままでいてね」(燈子の独白内)(♯∩♭)
- 第34話 燈子「今まで(=そのまま♭)通り そばにいてくれたら(=そのまま♯)嬉しいな」(♯∩♭)
- クソエモの激流・第10-十-34話
二つの「そのまま」を定義する
ありのまま。取り繕わない、演じない、本心の。→そのまま♯
変わらないままの。→そのまま♭
とおきます。
辞書にあたると、いろいろと微妙な言葉ですが、今は別に正しい日本語教室をしたいわけじゃないので、これでいきます。次に、各場面における「そのまま」がこのどちらなのか、吟味していきます。
第1話 燈子「君もちゃんとそのままを伝えればいい」「君はそのままでいい」(♯)
今になって読むと「あんたがそのセリフを言いますか燈子さん...」って感じですが。このエピソードの先輩はほんとイケメンだったな〜P29の侑の顔とか恋始まんなきゃいけないやつでしょこれ。
やが君は1話から挑発的ですね。やが君の第一印象、燈子の第一印象、全部最後でちゃぶ台返し。しかも初っ端から告白拒否2連発。読者を嘲笑うかのようです。
ここでの「そのまま」は、そのまま♯です。
燈子は「この小娘、気に入った...」(薄笑い)程度だったんでしょうが、このそのまま♯は、すでに束縛の言葉として、「好き」の暴力の亜種として機能し始めているんじゃないでしょうか。
第5話 燈子「そのままじゃいられなくなったから」(♯/♭)
燈子のダークサイドがチラつき始めたとこですね。
ここは悩みます。「子供の頃の私」から変化しないことの否定ともとれるし、
臆病な、ありのままの燈子を指す言葉とも取れます。その両方をあてがっても筋が通る。つーわけで、これはそのまま♯とそのまま♭両方の解釈が可能、としておきます。
....また一つ気になった点が。
1巻P154「子供の頃の私のことは 誰も覚えてないと思う」
6巻P59 「仮面の下の私のことはもう誰にもわからない」
う〜ん、今は放置!
第10話 侑「そのままの先輩を受け入れてくれる人」(♯)
これは、そのまま♯!(即答)
え...?大丈夫だよね?基本問題のツラした難問じゃないよね?
これは全ページのセリフ「やめませんか 劇 」さらに、「先輩は先輩のまま」などから、ガッチリ掴めます。あ〜侑はちゃんと言葉に出して伝えてくれる!読みやすい!
そういうところが...好き。
補足・気づき(ダブルミーニング)
侑の「やめませんか 劇」ってこれダブルミーニングじゃね⁈
侑的には劇=生徒会劇で発言したんだけど、
手前のグレートーン燈子には劇=姉を演じてきた私に聞こえてしまったと。
「たかが劇なんて言えるものではない」、思い切って言うと、燈子のこれまでの人生を「劇」の一言でまとめ、その上で否定しかねない響きを持った発言だったと!
そんで厄介なのが侑の意図通りに燈子が受け取ったにしても、その生徒会劇は劇=姉を演じる私にあらかじめ含まれている!弁解の余地なし!
いずれにせよ燈子は激怒した!そしておよそ2ページ分の怒りの沈黙を挟んで放ったセリフが!人生スケールの!
「そんなこと 死んでも言われたくない」
フゥーーーーー‼︎(エモ峠にて息絶える)
第10話 燈子「君はそのままでいてね」(侑の独白内に紛れて)(♭)
はい難所ですここ。これは侑の解釈です。
この発言は、そのまま♭です。
解説は後で!次ッ!
第十話 燈子「君はそのままでいてね」(燈子の独白内)(♯∩♭)
このセリフは そのまま♭でそのまま♯を束縛するものです。それが燈子の意図です。
解説は後で!次ッ!
第34話 燈子「今まで(=そのまま♭)通り そばにいてくれたら(=そのまま♯)嬉しいな」(♯∩♭)
もうね、ヤバイ。天才化け物悪魔だよ仲谷先生‼︎
ほんっとにマジで!ここで明かすか!ヤバイヤバイヤバイ...
クソエモの激流・第10-十-34話
これブログなんだから。解説しなきゃなんだから。ヤバい、以外の言葉で。
お気づきいただけましたでしょうか。
第10話 P154-155 は燈子の沈黙。
第34話 P154-155は 侑の沈黙。
この完璧な逆転劇。あぁ〜〜っ‼︎
そうだった。今回は「そのまま」の話だった。
この3つはまとめて説明しないとまとまりが悪いです。
唐突なただし書き(重要)
まず僕は『やが君』を読み解くとき、
・独白が最も信頼できる情報であること
・独白は登場人物間のすれ違いを読者にだけ提示するものとして機能していること
を念頭に置いています。(今更かよ)
解説
この3つのエピソードに根深い関連があることはいいですよね。1度目の河原告白と、その歪な再演。
ただし書きに書いたとおり、10-十話は、侑と燈子のふたりの、複雑なすれ違いのスタート地点です。侑のあの名告白により、複雑怪奇な認識のすれ違いが始まったのでした。
ここで第10-十話と第34話の構成上の類似点に触れておくと、いずれも最後は
侑の独白→燈子の独白 という流れで締めくくられることが挙げられます。
二人の認識の食い違いが露わになる箇所として第19話での電話のやりとりがあります
(続く)
ごめんなさい、記事名に偽りあり、ですね。((前篇)を付け加えながら)俺、約束破る。
約束守る侑はホンマええ子や。
こんな半端なところで記事を分けるのは
寝たいからです。眠いからです。ごめんなさい。
おやすみなさいまた明日!
続き
TVアニメ「 やがて君になる 」エンディングテーマ「 hectopascal 」
- アーティスト: 小糸侑(CV:高田憂希),七海燈子(CV:寿美菜子),高田憂希,寿美菜子
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